とっても古いピアノの修理 2
さて、次の古いピアノの修理は、なんと59年前に製造されたKAWAI(カワイ)アップライトピアノ。
鋳鉄フレームに刻まれているKAWAIのろロゴが現在と違い、「KAWAIGAKKISEISAKUSYO(河合楽器製作所)」と書かれています。
ちなみに、古いYAMAHA(ヤマハ)には「NIPPONGAKKI(日本楽器)」と書かれています。
さて、今回の依頼はまたしても「使える状態にして欲しい」との事でした。
この「使える状態にして欲しい」と言うのは、40年前以上の古いピアノの調律・修理依頼が来た時には、絶対と言っていいほど頂く依頼です
もうお気づきかと思いますが、つまりこのピアノは「使えない状態」なのです。
どれくらい使えないかと言うと、音を出すと鍵盤は全体の1/3は戻らない、もしくは連続打鍵ができなくなります。そして、高音部のハンマーは弾(はじ)けています。
しかし、使える状態の度合いにもよりますが、直すことは可能です🛠️
今回のご依頼者は90歳のご高齢の男性で、「死ぬまでに曲を仕上げたい」との事でした。 そんな熱い想いを受け取り、今回はこの依頼を受けました。
まず、音が鳴らなくなっていた原因は、ウィペンと呼ばれるアクションの動きを司る根本的な部分が固まって動かなくなっていたことが原因でした。
年数が経って入りピアノではよくある事で、この部品には軸を支える部分にフェルトが使われており、それが湿気によって膨張したり、フェルトが硬質化することによって引き起こされてしまいます。
修理内容としては、このフェルトを交換するか、一度軸を引き抜きフェルトをリーマーで削り解す事でもう一度滑らかに動くようにします。今回は後者の方法で修理しました。
簡単な作業に見えるかもしれませんが、穴の大きさは一つ一つ違い、こちらの部品は木部合わせという複雑な工程も挟むので、通常の作業より時間がかかります。(この工程についてはまた別の記事で書こうと思います)
合計で20個ほど直しました。他にも鍵盤が原因で動かなくなっている部分もあったりと、音が鳴るようになる工程だけで2時間かかってしまいました。
そして続いてはハンマーの修理です。
ハンマーの修理は、基本的に爆ぜた状態になってしまったらフェルトと木部をくっつけていたピンを打ち直すか、新しいハンマーに替えるかのどちらかです。もし今後まだ長く使っていくと言うのであればハンマーの全取り換えをしますが、なかなか料金も重なることから、今回は一時的な修理を行いました。
どんなものかと言うと、ハンマーを紐でキツく縛るというなんとも古典的な方法です。しかしこれが意外と効きます。が、音も従来のものより劣ってしまい、やはり一時的なものになるのは確かです。
このあたりのことはお客様とよく相談し、予算などもお聞きしながら丁寧に作業工程などを説明いたしました。
そして最後に、やはり調律は恐ろしいほど下がっており、A=428Hzでした。4回ほど調律を行いました😅
鍵盤も動くようになり、練習も捗るようで、とても嬉しいです☺️
余談ですが、このピアノの鍵盤蓋には謎の突き上げ棒のようなものが付いており、用途不明でしたが、組み立てる時にようやく用途が判明しました。
なんと、上前板を開けたまま、アクションが露出する形でも譜面台が立てられるようにする突き上げ棒でした!!
初めて見る機構に感動すると共に、この機構は現代でも取り入れればいいのに、、とも思いました😂